2026年9月23日 · スタジオより
アーカイバル顔料プリントとは何か
このサイトのプリントには、すべて「アーカイバル顔料プリント」、あるいは「ジクレー」という言葉が添えられています。美術の世界ではよく使われる言葉ですが、説明されることはあまりありません。ここで、その意味をお伝えします。
染料ではなく、顔料
家庭や事務所のプリンターの多くは、染料インクを使っています。色を液体に溶かしたものです。染料は鮮やかですが、紙に染み込み、光によって比較的早く褪せてしまいます。
顔料インクは、色を目に見えないほど小さな固体の粒子として、液体の中に含んでいます。粒子は紙に溶け込むのではなく、紙の表面とそのすぐ内側にとどまり、光や空気に対してはるかに強い耐性をもちます。「アーカイバル」という言葉は、この耐性のことを指しています。
木材パルプではなく、コットン
一般的な紙は木材パルプから作られ、そこに含まれる酸によって、時間とともに黄ばみ、脆くなっていきます。ファインアート紙はコットン(ラグ)から作られた中性紙です。白さとしなやかさを保ち、顔料を安定して抱き続けます。
ここでは、そうした紙を三種ご用意しています。キャンソン エディション・エッチング・ラグ、ハーネミューレ ジャーマン・エッチング、そして竹尾の柿田。さらに二種をご相談のうえ承ります。手に触れたときの違いは、三つの紙でご紹介しています。
「ジクレー」という言葉
ジクレーは、フランス語で「吹き付け」を意味する言葉に由来し、工程そのものを指しています。大判のインクジェット・プリンターが、顔料インクを微細な粒として紙に置いていく方法です。この言葉だけでは、品質について何も保証しません。大切なのは組み合わせです。顔料インク、アーカイバル用紙、そしてプリンターを調整し、写真家の意図を再現する術を知るラボ。
ここでのプリントはすべて、三橋一樹自身のマスターデータから、東京のファインアート・ラボが受注ごとに制作しています。
どのくらい長持ちするのか
中性のコットン紙に顔料で刷られたプリントは、直射日光を避ければ何十年も、第三者機関の展示試験では百年を優に超えて持つことが多いとされています。どんなプリントにとっても最大の敵は光、とくに直射日光で、次いで湿気と扱い方です。実際の扱い方については、プリントと暮らすをご覧ください。
限定エディションにとって、なぜ大切なのか
限定エディションは、希少性についての約束です。アーカイバル・プリントは、時間についての約束です。二つが揃ってはじめて、番号が入り、二か国語の作品証明書が添えられてお手元に届くプリントが、それを収める額よりも長く生きることを意味します。